HOMENews Release | アンドレ・アンリ氏近況レポート  

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アンドレ・アンリ氏近況レポート

世界的ソリストであり、ストンビトランペットを愛用するアンドレ・アンリ氏が2008年秋〜2009年新春にかけて東京、宮崎、兵庫の各地にて演奏を行いました。今回はその一連の模様をレポートします。

2008年9月28日(日)武蔵野音楽大学ベートーヴェンホールにて行われた第23回トランペットフェスティバル(日本トランペット協会主催)。アンリ氏はフェスティバルのクライマックスを飾るスペシャルコンサートへの特別ゲストとして出演。氏が絶大な信頼を寄せるピアノニスト、長尾洋史氏とともに演奏を届けてくれました。
1曲目はコルネットを手にステージに登場。ゴーベール作曲の「カンタービレとスケルツェット」を演奏。コルネットの持つ本来のまろやかさと軽快なタンギング、美しい発音、そしてフランスを故郷とするアンリ氏によるフレージングは、本物の「コルネットのために書かれたフランス音楽」というものを私達に教えてくれたかのようでした。この曲は、2ヵ月後に開催された日本管打楽器コンクールの課題曲で、今回アンリ氏が取り上げたのはそこに理由があり、彼の教育的な視点と意欲による演奏でした。音大生を中心としたコンクール参加予定者にとっては貴重な演奏であったに違いありません。
続いてE♭管でネルーダの協奏曲、C管とピッコロを用いてモーツァルトの「エクズルターテ・ジュビラーテ」を演奏。どの特殊管を用いても、音そのものの美しさと、それに加えて優しさと非常に深い情熱を感じさせる演奏は、もはやテクニックの素晴らしさなど忘れさせてしまうものでした。アンコールにはもう恒例と言っても良いでしょう。プッチーニのオペラ「ジャンニ・スキッキ」より「私のお父さん」を演奏。アンリ氏の心に染み入る温かい演奏が満席の会場を包み込みました。
終演後、ステージ上にて質疑応答の時間が設けられ、会場の愛好家からの質問にアンリ氏が回答。彼がトランペットを始めたきっかけ、オーケストラ奏者とソリストとの違いなどについて、時間の制約のある中で、理路整然としかも丁寧に解説をするアンリ氏の姿からは、彼の明晰さと人柄をも感じさせられました。立ち見が出るほど会場を埋め尽くした多くの愛好家・学生・プロ奏者に、アンリ氏とその楽器が持つまろやかで美しい音色が届けられたトランペットフェスティバル。その情熱的な演奏は日本のトランペット奏者に大きな影響をもたらしたのではないでしょうか。

トランペットフェスティバルより(日本トランペット協会提供)


続いて12月、宮崎県へと飛んだアンリ氏はメディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場)にて行われたアカデミックブラスアンサンブル(以下、ABE)の第26回特別演奏会に特別出演。宮崎で活躍するピアノ奏者・浜月春佳氏とのソロ演奏、そしてABEとの共演と精力的なメニューをこなしました。共演されたABEメンバー、そして浜月春佳氏よりアンリ氏との演奏についてレポートをいただいていますので、紹介をさせていただきたいと思います。

〜アンリ氏の音はアルプスの風に似て〜

ABEとティコティコを共演(宮崎)

「演奏技術だけでなく、音楽を表現することの喜びを伝えたい」 リハーサル後の小料理屋で、アンリ氏はこう語った。  アカデミックブラスアンサンブルは宮崎県内の音楽教師を中心に組織するブラスアンサンブルである。結成24年目を迎え、定期演奏会には国内外のトッププレイヤーを招いている。今回のゲストは、今をときめく世界的トランペット奏者アンドレ・アンリ氏。ソロステージではアンリ氏の卓越した音楽性をストンビの持つ気高い響きが余すところ無く引き出し、会場を熱狂の渦に巻き込んだ。  「どうしてあんなに温かい音が出るのか。トランペットのイメージが変わった」(43歳・男性)  「本当に素晴らしい演奏会だった。また彼の演奏を聴きたい」(28歳・女性) 演奏会終了後に寄せられた聴衆の感想は、どれも最上級の賛辞を含んでいる。観客には学生も多く、アンリ氏が乗せたメッセージは、宮崎の聴衆に確実に届いたことであろう。 トップアーティストに共通することがある。それは、よく食べ・よく飲み・よく笑うこと。もちろんアンリ氏もリハーサルと本番終了後は、宮崎地鶏をほおばり、音楽への情熱を熱く語った。氏は、ともすると技巧の追及のみに偏りがちな音楽教育の現状に危機感を抱いているとのこと。自分は、一生をかけトランペットを通じて音楽を表現することの喜びを伝えて行きたい。それこそが使命だという。 なるほど、リハーサル・本番を終始笑顔でこなし、アンコールには日本の歌謡曲を演奏するなど、並みのサービス精神ではない。アンリ氏の音楽家としての志の高さは、高い芸術性と音楽表現への熱い思いに支えられているのである。 我々団員は、アンリ氏との共演を通じて彼の強靭な体力と精神力、音楽に対する情熱、そして大きな人間性に触れ、ひとつの推測を得るに至った。アンリ氏の奥様であるマダム・サトコ(日本人!)によると、アンドレ・アンリ氏の故郷、フランスのシェラール村は、晴れた日にはアルプスが望めるほどの豊かな自然に囲まれているという。もしや、アンリ氏のおおらかな人柄と豊かな音楽性は、彼が生を受けたシェラール村の豊かな自然こそが育てたのではあるまいか。我々団員と観客はあの日、ホールに響くアンリ氏の艶やかな音の中に、アルプスの風を感じた。熱狂の演奏会が終わって数ヶ月が過ぎた今、いつの日か彼の故郷を訪れ、この推論の真偽を確かめてみようと考える毎日である。

追記
アンリ氏は本番前日の懇親会、本番後の打上げともウーロン茶で通した。 本当は無類のワイン好きだというが、コンディション維持のため、年に数回しかアルコールを口にしないとのこと。彼の優しい音は、そのストイックな姿勢にも裏打ちされているようだ。団員一同、身につまされる。(反省

                                                                                                                        石黒政幸

〜アンドレ・アンリ氏とABE夢の共宴〜  

去る2008年12月12日(金)、遂にアンドレ・アンリ氏が夫人を伴いメディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場)大練習室に姿を現した。2003年の某吹奏楽専門雑誌“BJ”の表紙でお見受けしてから5年、私の脳裏にあったイメージそのままのお姿だ。第一印象は“気さくで陽気なフランス人”。我々、アカデミックブラスアンサンブルのゲストは毎回、我々が選んでいるのか、はたまた逆にゲストに選ばれているのか、必ず我々のノリにフィットする方ばかりだ。アンリ氏が練習室に現れると同時に“フランス国歌”での歓迎。フランス国歌での歓迎を受けたことは今までにないとのことで大変感激されていた。そのことをきっかけに例にもれずアンリ氏とも即、意気投合。早速の合わせとあいなった。  今回の共演曲はフィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルの往年の名曲“ティコ・ティコ”。先程のアットホームな歓迎ムードから一転して練習室には緊張感のある張り詰めた空気が漂う・・・。それからはまさに真剣勝負、やはりこれがアンサンブルの醍醐味だ。私を含めた伴奏を務めるメンバーと固唾をのんで見守るメンバー全員がアンリ氏の演奏に耳を傾ける・・・そして演奏が終わるやいなや練習室に割れんばかりの拍手が鳴り響いた。その時の感想を単刀直入に言うと「アンリ氏は単なるらっぱ吹きではなく音楽家である」ということ。トランペットを吹くために生まれてきたというよりは、たまたまトランペットという楽器に出会ったのであろう。名器ストンビの“MASTER”(氏の楽器はB♭、C、E♭、コルネット、ピッコロと全てMASTER!!)を操りトランペットであることを忘れさせるような素晴らしい演奏を聴かせてくれた。あんなにも小さな美しいピアニッシモは生まれて初めて聴いたかもしれない。そしてあんなに歌心のあるトランペットも初めてかもしれない。普段の我々がついつい“吹きすぎる”傾向にある中で、アンリ氏の音楽と真摯に向き合う丁寧なアプローチの仕方は我々に新しい音楽の“引き出し”を与えてくれたような気がする。これが初対面の強烈な印象だった。  一夜明けての演奏会当日。恒例の練習後の“前夜祭”を経て、一段とゲストとの距離が縮まる。これも我々ABEのお決まりパターンだ。アンリ氏と間近でお話することが出来るだけでも貴重な場面であった。  そして演奏会が始まり、いよいよ今回の一番の楽しみであったアンリ氏のソロステージとなった。舞台裏にいるメンバー全員が緊張感に包まれる。こんな雰囲気も初めてのこと。「トランペットの神様、モーリス・アンドレを尊敬する」というアンリ氏の演奏はまさにアンドレを彷彿とさせる“歌”に満ち溢れていた。アンコールに演奏した「川の流れのように」は今でも私の心に響いている。  終演後の打上げ会場でも幸運なことにアンリ氏は我々に“演奏”を聞かせてくれた。関係者の方々のお話ではこのような席で演奏をされるのは初めてかもしれないとのこと。そんなスペシャルな演奏にメンバー一同ご満悦。我々との交流を心から喜んでくださったアンリ氏のささやかな心意気に感謝しつつ、あっという間の2日間が終わった。  後日、アンリ夫妻から我々ABEメンバーにメッセージが寄せられた。そこには予想だにしなかった驚くべき内容が記されていた。「フランスの生まれ故郷の村の教会でABEと一緒に演奏したい」と。その文面にメンバー一同心躍った。我々ABEは来年結成25周年を迎える。節目節目に海外公演を行ってきた我々の次の行き先はフランスに決まったような気がする。これからまた新たな目標に向け、一歩一歩前進していきたい。アンリ氏との夢の共宴を夢見て・・・ 最後に、この場をお借りして偉大なる音楽家、アンドレ・アンリ氏に心から感謝申し上げます。

                                                アカデミックブラスアンサンブル トランペット奏者 窪田孝典

アンリ氏には演奏会の2部のソロステージの後、3部でも私達アカデミックブラスアンサンブルとアブレウ作曲の「Tico Tico」を共演していただきました。ソロステージの「歌う」トランペットに感動!そして2部のエキサイティングかつ繊細な音楽に、お客さんも、一緒に演奏させていただいた私達も、本当に興奮させられました。  また、アンリ氏の音楽に対する真摯な態度や、音楽にかける情熱の深さを知り、演奏以外にも多くのことを学ばされました。いつの日かまたアンリ氏と共演出来ることを願っています。

                                                アカデミックブラスアンサンブル ホルン奏者 松ヶ野やよい

アンリさんの奏でる音色は甘く優しく、まるで人が語り掛ける声のようでした。また、観客を魅了し、至福のひと時をもたらす演奏はアンリさんの魅力的なお人柄が表れていました。本番中のエピソードですが、アンコールも終わり最後の挨拶の際「一緒に登場いただけると思いきや!」、一人こっそり舞台裏に隠れて面白がるお茶目な面もおありでした。

                                                                                                                  浜月春佳

アカデミックブラスアンサンブルメンバーと(宮崎)

アカデミックブラスアンサンブルの皆さん!そして浜月さん、素敵なレポートをありがとうございました!! さて宮崎での興奮も冷めやらぬ中、アンリ氏は1月に兵庫県伊丹市へと現れました。1月25日には伊丹シティフィルハーモニック管弦楽団の名曲コンサートに特別出演(伊丹アイフォニックホール)。オーケストラをバックにハイドンの協奏曲を熱演し、翌26日には陸上自衛隊中部方面音楽隊にてクリニックを行いました。今回はリハーサルから音楽隊でのクリニックまでの4日間、アンリ氏と行動を共にされた伊丹シティフィルトランペット奏者の田中知幸さんより感想をいただきましたので紹介致します!

伊丹シティフィルとハイドンを共演(伊丹)

音楽とは、
音楽はいつどこから生まれ、何の為に存在するのか ある研究家の一説によると、最初の音楽は大地の恵みに対する感謝と自然への祈りから始まったそうです。 人々は大地から身体で一番近い足首に音の鳴るものをくくりつけ打楽器のリズムと声に合わせて踊り続けたそうです。そしてその歌と踊りを舞う人は特別な存在(ある意味神に仕える)であったそうです。それから気の遠くなるような年月が経ち、人間は狩りから畑を耕す事を覚え、家畜を飼い道具を使う事を覚えるようになり、大地と共生する道を歩みました。その歴史は自然の脅威との闘いであり、その闘いと共に音楽も人々と共に育っていったのだと思います。 大地への想い、自然への想いから神が生まれ、神への想いを音楽を通じて対話しようと人々は沢山の歌を歌い続けました。それがグレゴリアンであり、バロック音楽へと導かれていき、今日へと繋がっています。 私達音楽家は音楽の持つ本当の意味を感じて演奏しなければ、それは無に等しい事だと思います。今日の文明社会は人間を大地から遠ざけ、自然の脅威も感じられなくなって来ましたが、人間は文明が作り上げた妄想に縛り上げられ、土の匂いを忘れ、目標を失い自暴自棄になり、人間同士が脅威へと変わってしまいました。 今回アンリ氏と4日間共に過ごす事が出来た事は私にとってかけがえの無い事であり、もう一度音楽の原点を見い出す事の出来た奇跡の4日間でもありました。まさにアンリ氏の音楽はあの土の香りのする奇跡の祈りであり、私達で言う神の声そのものでした。ハイドンのコンチェルトを伴奏しながら私はハイドンとアンリ氏を通じて神との対話、大地との対話をしているかの様な錯覚にとらわれ気がどうかなってしまいそうな衝撃に駆られてしまいました。フランスはとても芸術が栄えていますが、食糧自給率の高さと奥深い農業との関係を無視する事は出来ないと思います。私達はもう一度本当の土の匂いに触れ、大地の恵みに感謝し、音楽の持つ本当の意味を感じ原点に帰って演奏を心がけなければならないと思った4日間であり、それを改めて思い出させてくれたアンリ氏には心から感謝します。そして沢山の仲間にアンリ氏の通訳をして頂いた奥様*にこの場を借りて感謝申し上げます。  これからも日本、そして世界中の人々にアンリ氏の音楽のメッセージを届けて欲しいと願うばかりです。本当にありがとうございました。

※注:アンリ氏は昨年日本人女性と結婚されました。

陸上自衛隊音楽隊にてアルチュニアンを共演(伊丹)

田中さん、とても素晴らしい感想レポートをありがとうございました! 以上、アンドレ・アンリ氏近況レポートでした。

尚、アンドレ・アンリ氏は昨夏開催をしたアンドレ・アンリ&津堅直弘トランペットアカデミーの第2回開催のため、今夏も来日予定です!アカデミー詳細は近日発表予定。どうぞお楽しみに♪